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深い緑の肌には光が潜んでいた

硝子の上には小さな虹が幾重にもかかっていた

世界の果てには 未だ見ぬ風景がたくさんあって

それは夢のなかのおもいでに似ていた

  幼いときに訪れた薔薇のある庭

  それは誰とは知らぬ他所(よそ)の人の庭だった

  ちいさなともだちがその枝を折ったとき

  不意に現れた黒い影が怒鳴った

  わたしたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した

  一度も振り返らずに

あの薔薇の枝はどうなったのだろう

空間に投げ出されて そのまま宇宙の彼方に飛び散ったのか

それとも深い間隙に沈んで そのまま咲き続けているのか

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