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惟 yi 紫野京子のWebsite
深い緑の肌には光が潜んでいた
硝子の上には小さな虹が幾重にもかかっていた
世界の果てには 未だ見ぬ風景がたくさんあって
それは夢のなかのおもいでに似ていた
幼いときに訪れた薔薇のある庭
それは誰とは知らぬ他所(よそ)の人の庭だった
ちいさなともだちがその枝を折ったとき
不意に現れた黒い影が怒鳴った
わたしたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した
一度も振り返らずに
あの薔薇の枝はどうなったのだろう
空間に投げ出されて そのまま宇宙の彼方に飛び散ったのか
それとも深い間隙に沈んで そのまま咲き続けているのか
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