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惟 yi 紫野京子のWebsite
高原で
―― 信濃追分にて
分(わか)去(さ)れの石像たちも
み寺の半跏思惟像も
経年の面影をやどしつつ
変わらず 在る
通り過ぎた季節は
そのまま留まることはない
その時の私と 今在る私は
すでに変わっている
それが生あるものの定めなのか
風に舞い 散ってゆく
木の葉たちの姿がそれに重なる
それでも 色づくものの
はっとするほどの 耀(かがや)きよ
いのちを燃やす 時の炎
それに比べて ただ
しずけさをやどす 石の面(おもて)よ
私はかつて望んだはずだった
変わらぬものの大切さを
けれど今 変わってゆくことに
心打たれている
この時に取り残された 山峡(やまあい)の村で
消え去ってしまった人々の 無言の気配に
いつか その輪のなかに
自らも加わる予感を抱きながら

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